Watchman Dongleとは?
まずはWatchman Dongleとはなんぞやというのを説明します。
端的に言うとこれです。
これはVIVEトラッカー(2018)の付属品です。
これをPCにUSBで接続して無線で通信します。
SteamVRデバイスとは一対一
すべてのLighthouse SteamVRデバイスは、Watchman Dongleに接続されます。
これはコントローラーとて例外ではありません。
そして必ず1つのドングルに1台のデバイスだけが接続できます。
再ペアリングすると、前に接続していたデバイスは解除されます。
また、最終的にSteamVRで使用するコントローラーであっても、 Lighthouse対応のコントローラー以外のデバイスはペアリングできません。
例えばQuest系のコントローラー、VIVE Cosmos用コントローラー、VIVE Focus3やVIVE XR Eliteのコントローラーはペアリングできません。
通常のLighthouse用VR HMD(VIVEやIndexなど)がWatchman Dongleなしにコントローラーとペアリングできるのは、それぞれのHMDの中にWatchman Dongleのチップやアンテナがそのまま内蔵されているからです。
これは本当にチップごと2つ搭載されています。
例えば、これはHTC VIVE CEのメインボードです。赤丸位置に搭載されている 「nRF24LU1P」というチップがWatchman Dongleです。
わざわざ物理的に離して2個搭載されています。
これはVIVVE Proのメインボードです。
同じように赤丸位置にnRF24LU1Pが、ほぼ左右対称にそれぞれ端に搭載されています。
他のチップの場合もあります。
これはValve Indexのメインボードです。
nRF52840というチップが2個、Watchman Dongleとして搭載されています。
このように、様々な理由により案外力技というか、原始的な実装がされています。
(※ちなみに、LighthouseのSteamVRデバイスは、Watchman Dongleに接続しなくても、USBケーブルでPCに有線接続することでも動作できます。
腰のトラッカーをHMDのUSB端子に繋ぐ、などの少し特殊な運用も可能です。 )
Watchmanドングルの種類
Watchman Dongleにはいくつかの種類があります。
- VIVEトラッカー1.0、2.0(2018)付属品
最も一般的なWatchman Dongleです。
nRF24LU1Pが搭載されています。
- VIVE Tracker 3.0付属品
基本的には1と同じものです。nRF24LU1Pです。
頭の部分の色が水色からグレーになりました。
また、(この画像にはありませんが)付属品のケーブル延長する台座のレセプタクルがMircoUSBからUSB-Cに変更されています。
- Steam コントローラーワイヤレスレシーバー
これは、Steam(Valve)が2015年にSteam MachineやSteam Linkという(割りと失敗作の)Steamゲーム用コンソールを売っていたときに、その純正コントローラーをその後PCにUSB接続するために売られていたコントローラー用USBドングルです。1600円ぐらいで売っていました。
これは中身のハードウェアがWatchman Dongleと全く同じうえ、SteamVRのファームウェアアップデートユーティリティから簡単にWatchman Dongleそのものに改造してしまうことが可能なものです。
以下URL(坪倉さんの2017年の記録)から当時の状況が参照できます。
また、すでにファームウェア書き換え済みのものを、IntoFreeさんが売っています。
- Tundra Super Wireless Dongleシリーズ
Tundra Trackerの付属品です。
また、Tundra Labsの公式(海外)より単品で買うこともできます。
SW3、SW4、SW5、SW7の4種類のバリエーションがあり、それぞれ数字の台数のトラッカーが接続できます。
このうちSW3とSW4は現在トラッカー3台セット・4台セットが売られているのでそれにそれぞれ同梱されており、SW5とSW7はクラウドファンディングで5台セットや7台セットを注文した人、もしくは3台セットから「ドングルだけ上位にアップグレード」のオプション入れて発注した人のみ手に入れています。
つまりこの製品は1台で3~7個のトラッカーを接続できます。
ただし【Watchman Dongleは1個につき1台のみ】という原則はかわりません。
どういうことかというと、このSWドングルの中にはUSBハブのチップと、台数分のWatchman Dongle(nRF52840)が物理的に搭載されています。
※転載画像 SW7とSW3
なおこのうちSW7はUSBハブのチップの発熱が大きく不安定であるため生産が停止され、ユーザー間では分解して3Dプリントで穴あきケースを自作し、ヒートシンクを貼って冷却するというMODが行われています。
流石にあまりに高集積にするのは好ましくないようです。
SW3とSW4は4ポートハブのチップのため発熱問題はなく、筆者はSW5を持っていますが今のところ問題は発生していません。
- eteeDongle SteamVR
eteeというコントローラーのSteamVR版がLighthouse用の外付けトラッカーを装着する構造で、その外付けトラッカー部分は「内部にバッテリーを持ち単体でトラッカーとして動作する」という面白い設計の製品で、実際単体トラッカーとしても販売されています。
そのトラッカー単体販売版の付属品の補修部品として提供されているドングル。
eteeのコントローラードングル(2台用で専用品)と同じ外観のため注意が必要です。(もちろん1台接続)
- Shiftall X2ドングル
ShiftallのHMD「MeganeX」の付属品です。MeganeXの生産数が極めて極小ですが、他のHMDユーザーにも需要があるのでは?ということでドングルだけ単品販売されました。
MeganeXは本来インサイドアウトのHMDであり、本体内や後付けのLighthouseトラッキングユニット内にWatchman Dongleを持たないため、コントローラー接続用に2台のデバイスが接続可能なWatchman Dongleを単体で付属するという形をとっています。
外観はHaritoraXワイヤレス用のドングルと同じため、ケース部品を流用していると思われ、ハードウェア的にはUSBハブと2台のドングルが実装されていると思われます。
売り切れている場合いつ再入荷するかは不明。3980円で買えるなら悪くないと思われます。
- Watchman Dongle DIYキット
Watchman Dongleを自作するキット(!)。同人ハードウェアのためある程度ガジェット弄りする気や心得のある人向けです。
USBハブとプログラマブルなnRF52840(Valve IndexやTundra SW等と同じチップ)を3個搭載し、手順通りファームウェアを書き込むことで3個のWatchman Dongleとして動作します。
国内Watchman Dongle研究の第一人者的な方が自作(なんと手実装)して売られています。
PCに接続する
Watchman Dongleはその形状からPCのUSBコネクタに直結するもののように見えますが、直接マザーボードのUSB端子に指すと不安定になるとされています。(不安定になる環境がある。不安定にならないこともある。)
そのため、VIVEトラッカーにはUSBの台座とケーブルが付属し、PCから離して設置することが推奨されています。
これはおそらく、USB3.0のデータ通信周波数が2.5GHzのため、近い2.4GHzの周波数帯を使用するWatchman Dongleの通信に影響を及ぼすことがあるためと考えられます。
ツクモのPCサポートページでも、無線マウスやキーボードのUSBレシーバーは必ずUSB2.0のポートに指し、できれば延長コード(短くてもOK)でマザーボードから少し距離をとることが推奨されています。
トラッキングの安定性を重視するならば、上記の注意事項に準拠することを推奨します。
また、HTCのVIVEサポート公式のTwitterアカウントでも、
・USBハブに並べて刺さないこと
・付属の台座を使用してドングル同士の間隔は15cm以上離すこと
が推奨されています。
ただし、Tundra SWシリーズを見ればわかるように、USBハブに直挿しとほぼ同じような基盤横並び実装されています。
※再掲
どうやらこのような実装でも問題なく動作する(こともある)ようです。
が、なるべく離したほうがいいことに違いはありません。
完全に隣接ポートではなく、1つ2つポートをあけて刺したり、下図の通り2台は直刺しで1台は延長ケーブルで離すなどの工夫をすれば、全部を延長ケーブルにせずとも安定します。
実際に下図のような構成で長らく使用していますが、問題はありません。
また、USBハブに直刺しして使用する場合、USBハブのポートの向きで安定性が変わります。
上図の通り、ポートが横並び(直列?スリム型?)配列のハブに並べて指しても安定することが多いですが、
縦並び(置き型?)のハブに並べて刺すと通常より高い確率で不安定になります。
おそらくアンテナの構造上の都合だと思いますが、このようなUSBハブに接続したい場合は直刺しは1
だけに留める必要があるでしょう。
また、7ポートのUSBハブは後者の縦並びの形状のものが多い(机上設置して上から機器やケーブルを挿すため)ようなので、7ポートハブ自体を諦める方が懸命でしょう。
同時にUSB3.0ハブも避けるべきです。
必ず安くて安定しているUSB2.0のハブを買いましょう。
この辺のハブで良いと思います。
ドングルとSteamVRデバイスをペアリングする
基本的に、SteamVRではどのドングル(またはHMD)にどのデバイスが繋がっているかが非常に分かりづらいです。
そのため、すべてのドングルを抜き、1個ずつ順にペアリングしていくのが一番安全です。
- すべてのドングルを抜く
- HMDだけが繋がっている状態で、コントローラーを左右ともペアリングする
もしくは、コントローラー左右とも電源を入れて、トラッキングされている状態にする。
(※必ずコントローラーの電源はONにしておく) - ドングルを1個接続する
- トラッカーを1個ペアリングする。
- ペアリングしたらドングルにどのトラッカーにペアリングしたか書いたテープを貼る
- 次のドングルを1個接続する
- 次のトラッカーを1個ペアリングし、ドングルにテープを貼る
(以下繰り返し…)
これで、どこに何がわかるだけでなく、HMDにトラッカーがペアリングされる・トラッカー用のドングルにコントローラーがペアリングされる という事故が防げます。
次に、SteamVRデバイス(コントローラーやトラッカー)の標準的なペアリング方法を説明します。
1. SteamVRを起動し、小さいウィンドウ左上のメニューから、「デバイス」→「コントローラーのペアリング」をクリックします。
(※トラッカーなども同じです。気にせず「コントローラーのペアリング」を押してください)
2. コントローラのタイプを選択画面が表示されます。
ここは実はどれクリックしても機能的には同じです。(表示されるガイドが違います)
3. 上記のペアリング待ち表記になったら、デバイスをペアリングモードにします。
トラッカー(VIVEトラッカーまたはTundraトラッカー)の場合はボタンを長押し、
VIVEコントローラーの場合はメニューボタン(トラックパッドの上のボタン)とシステムボタン(トラックパッドの下の電源ボタン)を長押し、
Indexコントローラーの場合はシステムボタン(電源)とBボタンを長押しすることでペアリングモードになります。
4. ペアリングが完了したら成功!画面になります。
これを繰り返してトラッカーなどをペアリングしていきます。
他に、Lighthouse Console(SteamVRが一緒にインストールされているCUIコンソール)でペアリングできるため、OVR Advanced Settingsなどからペアリングすることもできます。
詳しくはこちらのnote記事をご参照ください。
また、この方が作成した「Watchman Pairing Assistant」というツールが便利です。
操作自体は若干慣れが必要ですが、ペアリングを解除することもできるため、たくさんWatchman Dongleを操作する場合は必須ツールになります。